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【2022年以降】住宅取得資金贈与の非課税措置の改正内容と注意点

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【2022年以降】住宅取得資金贈与の非課税措置の改正内容と注意点

2022年度の税制改正によって、住宅取得資金贈与に関する要件が見直されました。住宅を新築・増改築する際の資金を贈与するときに発生する贈与税に対する非課税限度額も変更されており、2022年以降に住宅取得資金贈与の特例の適用を受ける場合は注意が必要です。

当記事では、2022年以降に住宅取得資金贈与の特例を活用する場合に知っておきたい、非課税措置の改正内容と、適用条件、申請に必要な書類、活用時の注意点について解説します。

1.そもそも住宅取得資金贈与の非課税とは?

住宅資金贈与とは、父母や祖父母から子どもや孫へ住宅を新築したり増改築したりするための資金を贈与することです。通常、贈与額に応じて贈与税が発生します。しかし、条件を満たした場合、一定額までは非課税とするのが住宅資金贈与の特例です。住宅ローン減税と併用もできるので、住宅購入を検討している場合は知っておくと役立ちます。

住宅資金贈与は、2021年12月31日までは、最大1,500万円までが非課税とされてきました。しかし、「令和3年度税制改正の大綱」で非課税限度額の大幅な減少が決定しています。

出典:国税庁「「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」等のあらまし」

2.【2022年以降】住宅取得資金贈与の非課税措置の改正内容

2022年度の税制改正によって、住宅取得資金贈与に関する要件がいくつか見直されました。住宅取得等資金贈与の非課税措置を受けるためには、一定の条件を満たす必要があります。

改正後の要件の中でも、これから贈与を考えている方が注目すべきポイントは、次の4つです。

  • 非課税借置の適用期限
  • 非課税限度額
  • 中古住宅の要件
  • 受贈者の年齢

非課税限度額においては500万円もの引き下げとなっており、住宅贈与を考えている方には大きな影響が出るかもしれません。

ここでは、改正ポイントについて解説します。早めの対策が必要かを見極める材料としてお役立てください。

2-1.住宅取得金贈与の非課税借置が2年延長

住宅資金贈与の非課税措置は2021年12月31日までとされていましたが、2023年12月31日までに延長されました。

住宅資金贈与の非課税措置期限
改正前 2021年12月31日まで
改正後 2023年12月31日まで

実質2年の延長となり、贈与を受けやすくなったとも考えられます。しかし、2022年1月1日以降は非課税限度額の縮小が決定しています。非課税枠の縮小だけでなく、受贈者や建物の条件にも変更があるので注意が必要です。

出典:国税庁「住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税等のあらまし」

2-2.贈与税の非課税枠が500万円縮小

住宅資金贈与の非課税措置延長を受けて縮小した非課税枠は、500万円です。

贈与の時期 省エネ等住宅 左記以外の住宅
2020年4月1日~2021年12月31日 1,500万円 1,000万円
2022年1月1日~2023年12月31日 1,000万円 500万円

省エネ等住宅とは、省エネルギー性に優れた住宅です。非課税限度額は、住宅の家屋の種類に応じた金額となっています。

省エネ等住宅・その他の住宅のどちらも、500万円ずつ非課税額が減少しました。つまり、省エネ等住宅なら1,000万円、その他の住宅なら500万円以上の贈与を受けると課税対象になります。ただし、贈与税の基礎控除110万円と併用可能です。

贈与税の負担や控除額が気になる場合、なんらかの対処が必要です。贈与の前に家族や税理士に相談するとよいでしょう。

出典:国税庁「住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税等のあらまし」

2-3.贈与対象になる中古住宅の「築年数20年以内」の条件が廃止

住宅取得資金贈与は新築住宅に限りません。中古住宅にも適用できますが、築年数に条件がありました。しかし、今回の税制改正によって廃止が決定しています。

中古住宅購入の条件
改正前 取得の日以前20年以内(耐火建築物は25年以内)に建築されたもの
改正後 1982年(昭和57年)1月1日以後に建築されたもの

これまでは、中古住宅の場合は築年数が20年以内(耐火建築物は25年以内)と条件づけられていました。しかし、2021年度の税制改正によって完全撤廃されています。

2022年からは、2018年1月1日以降に建築された中古住宅も贈与の対象となっています。ただし、贈与の対象になるためには、耐震性の基準をクリアしたり証明書を用意したりしなければなりません。また、従来通り、「日本国内にある住宅」「住宅の床面積が40m2以上240m2以下」「家屋の床面積の1/2以上を居住用に使用」の要件を満たす必要もあります。

中古住宅の購入や増築を考えている方は、贈与の対象となる要件を確認しておきましょう。

出典:国税庁「住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税等のあらまし」

2-4.受贈者の年齢が20歳から18歳に引き下げ

税制改正前は、贈与を受けられる受贈者の年齢は20歳からでした。しかし、成人年齢の引き下げに伴い、改正後は18歳以上となっています。

受贈者の年齢
改正前 贈与を受けた年の1月1日において、20歳以上
改正後 贈与を受けた年の1月1日において、18歳以上

受贈者の年齢が18歳以上となるのは、2022年4月1日以降です。2022年3月31日までは20歳以上でないと対象になりません。受贈者の年齢の引き下げは2022年度の税制改正による変更ではなく、民法改正に伴う成年年齢引き下げが適用されます。

他の改正ポイントと開始時期が異なるので気をつけましょう。

出典:国税庁「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」

出典:国税庁「住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税等のあらまし」

3.2022年以降に住宅取得資金贈与の特例の適用を受ける場合

住宅取得資金贈与は一定額を超えると贈与税を納めなければなりません。しかし、「住宅取得資金贈与の特例」を活用することで非課税贈与が可能になるケースもあります。

ここでは、税制改正後の2022年以降に特例を受けたい場合、どのような手続きや必要書類があるのかについて解説します。住宅取得資金贈与の特例を適用するには、一定の要件を満たさなければなりません。要件は国税庁のホームページに記載されています。要件の一部を抜粋すると、以下の通りです。

  • 父母や祖父母から子どもや孫への贈与
  • 贈与を受ける年の1月1日において、受贈者が18歳以上
  • 贈与を受ける年の受贈者の合計所得が2000万円以下
  • 日本国内にある住宅
  • 登記簿上の床面積が40m2以上240m2以下
  • 床面積の1/2以上を住居用として使用
  • 贈与があった年の翌年3月15日までに贈与税を申告する

出典:国税庁「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」

住宅取得資金贈与の特例を利用するためには、贈与を受けた翌年の3月15日までの確定申告が必要です。贈与税の申告をし、要件を満たしていると認められて非課税措置が適用されるという流れです。

贈与税の申告には、「贈与税申告書」と「住宅取得等資金の非課税に必要な書類」が必要になります。贈与税申告書は国税庁のホームページからダウンロード可能です。同時に、「住宅取得等資金の非課税」のチェックシートも入手できます。

そのほか、一般的には以下の書類が必要です。

  • 戸籍謄本(贈与者と受贈者の関係が分かるもの)
  • 源泉徴収票
  • 登記事項証明書
  • 売買契約書の写しや新築の工事請負契約書

確定申告に不安や心配がある場合は、専門家に相談するのがおすすめです。

4.住宅取得資金贈与の特例を活用する場合に注意すべきこと

住宅取得資金贈与の特例を活用するにあたって、注意すべきポイントが2つあります。新居に居住するタイミングと贈与を受ける時期です。

住宅取得資金贈与の非課税特例を適用するためには、居住開始前に贈与を受ける必要があります。原則、贈与を受けた翌年の3月15日までに新居に居住しなくてはなりません。1日でも経過した場合、住宅取得資金贈与の特例が認められないので注意が必要です。

また、年末に贈与を受けた場合は、翌年の3月15日までに入居する必要があります。工事の予定が遅れた場合でも、3月15日を過ぎると対象外となります。特例を確実に活用するためにも、年末の贈与は控えたほうが無難です。

出典:国税庁「住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税等のあらまし」

まとめ

住宅取得資金贈与の非課税措置は改正され、2022年以降は「非課税借置が2年延長」「非課税枠が500万円縮小」「中古住宅の「築年数20年以内」の条件が廃止」「年齢が20歳から18歳に引き下げ」となりました。

2022年以降に住宅取得資金贈与の特例の適用を受ける場合、一定の要件を満たす必要があります。要件の詳細や申請時に必要となる贈与税申告書は、国税庁のホームページに記載されているので、特例の適用を受ける方は確認しておきましょう。また、特例を活用する場合、新居に居住するタイミングと贈与を受ける時期に注意が必要です。

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