SUCCESS STORY サクセスストーリー

すべての現場には ドラマがある story teller 村上 裕昭

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道南支店

村上 裕昭

Hiroaki Murakami

2012年入社

北海学園大学経営学部卒業。「生活に携わる仕事をしたい」と考え就職活動を進める中で、道外への転勤がなく地元で働ける点やブランドとしての安心感からセキスイハイムへの入社を志望。休日はショッピングを楽しんだり、仕事の充電にあてている。

順風満帆のスタート!…の、はずだった

「ハウスメーカーで仕事がしたい」

大学生だった村上には、明確な目標があった。
引越しで「間取り図」の魅力にとりつかれ、
家づくりに関わる仕事をしようと決意した。
その決意が揺らぐことはなく、大学3年生のとき、
半年間猛勉強をして宅地建物取引士の資格を取る。
就職活動では、営業マンが自由に間取りを提案できる
セキスイハイムが第一志望。
熱意は誰にも負けない自信があった。資格だって持っている。
内定通知がくる前から、自分はここで働くんだと確信していた村上は、
同期よりも頭ひとつ分抜きん出たスタートを切っていた……はずだった。

ところが。

1年目の契約、2件——同期で最下位。
2年目、1件。——また最下位。
3年目の今年は2件だが、どちらも先輩がとってくれた受注だ。
自分1人では、営業のステージにすら上がれない。

先輩に何度も相談した。
「数字は気にしなくていいから、自分のスタイルを見つけろ」と言われた。
「村上は、そのままで好かれる性格なんだから、自信を持ってやっていい」とも。

上司にも相談した。
「お前は、ありのままでいいから。心配するな」
そう返ってきた。

でも、何をすればいいのかわからない。
数字がないのに、何を自信にすればいいのかわからない。
「ありのままでいい」って、何なんだ?
不安が焦りを呼ぶ。

昼休み。
食事に出かけるのも億劫になっていた村上は、
昨晩の残りご飯をラップで丸めただけのおにぎりをかじった。
契約が成立しなかったリストを広げ、
実現しなかった間取り図を一枚一枚めくる。

このお客様は、どうして連絡がなくなったんだろうか。
このお客様は、どうして他社と契約したんだろうか。

あんなに大好きだった間取り図が、
「ありのままのお前がダメなんだ」と言っているようにみえる。

冷たいおにぎりは、何度噛んでも味がしなかった。

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話すのが…怖い。

その日はお客様との約束もなく、ひとり展示場にいた。
玄関のドアが開き、子ども連れの賑やかな声が聞こえる。
お客様と接することに恐怖心が生まれていた村上は、
緊張で背筋をこわばらせた。
「今日は何かのイベントですか?」

そう言って現れたのは、
若い夫婦と小さな女の子の家族だった。

鈴木圭介さん・みのりさん夫妻は、
すでに他のハウスメーカーA社で
家を建てることが決まっていて、
仮契約をする直前だという。
ただその後も継続して展示場を
あれこれと巡っているらしく、
セキスイハイムの間取りや内装を
ちょっと見学させてほしい、とのことだった。

他社で契約が決まっているなら、プレッシャーはない。
村上は久しぶりに、大好きな間取りの話で盛り上がった。
こんなに楽しく家づくりの話をしたのは、どれくらいぶりだろう。
肩の力を抜いて話ができた村上は、夫妻ともっと話したくなった。

この人たちのお手伝いがしたい——。

聞けば、家を建てることは決まったけれど、土地探しはこれからだという。
圭介さんは、一年後に転勤を控えている。土地を決めるのが遅れると、
せっかく新居ができあがっても、家族そろって暮らせない。

何か、力になりたい。

「ご要望にピッタリの土地をお探ししますから、
期待しててください!」
社に戻った村上は、土地情報を探し始めた。

その土地で暮らす鈴木夫妻と一人娘のカナちゃんの姿に思いを巡らせる。
楽しくて、気がつくと夜になっていた。

翌週、村上はおすすめの土地情報を手に鈴木家を訪問した。
そして「万が一があるかも知れない」という小さな希望から、間取り図も数パターン作っていった。
夫妻が資料を見ているあいだ、村上はカナちゃんと遊ぶことにした。
人見知りをはじめたカナちゃんは、なかなか打ち解けてくれない。
必死でカナちゃんと遊んでいた村上は、夫妻が真剣な表情になっているのに気がついた。
村上の提案した新しい土地での暮らしを検討している。

これは、ひょっとすると、チャンスかもしれない——。

「参考までに」と持参していた間取り図を差し出す。
みのりさんがウキウキした表情で自分の作ったプランを見ている。
「今度、その分譲地へご案内しますよ」

夫妻の顔が輝いた。

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残酷な宣言

村上は、鈴木一家に会うのが楽しみになっていた。
「最初から、村上さんにお願いしておけばよかったね」
候補地をいくつか案内した帰り道、みのりさんが圭介さんに
そう耳打ちしているのを聞いて、村上は小さな手ごたえを感じた。
鈴木家のリビングにお邪魔するのも何度目だろうか。
相変わらず、カナちゃんとはぎこちないままだが、
夫妻の家づくりは村上の提案が反映されてきている。

疲れてぐずりはじめたカナちゃんを寝かせに、みのりさんが
奥の和室に移動した。ふすまがそうっと閉まる。
ふたりきりになって、圭介さんが言った。
「あのさ、村上さん」
言いにくそうに書類を指で揃えている圭介さんを見て、
村上は身構えた。

胸が——ざわつく。

圭介さんは目を伏せ、絞りだすような声で言った。 「仲良くなった営業さんって、断りづらいんですよ。僕ら、心苦しくなっちゃって。どうすればいいだろうって、ずっと考えてたんですよね……」
村上は覚悟した。
——この家族に会うのも、今日で最後だ。カナちゃんとは、結局仲良くなれないままだった。
けれど、楽しかった。この人たちは家づくりの楽しさをもういちど思い出させてくれた。
それだけでも、出会えて本当によかった。

「突然連絡がなくなると悲しいから、はっきり言ってもらえるのがいちばんいいですよ、僕も楽しかったですし———」 明るく振舞ってみせる村上を、圭介さんが慌てて遮った。

「いや、そうじゃなくて……村上さんにお願いしたいんです!
だから、A社の営業さんにどうお断りすればいいか、
教えてほしいんです!」

「へ?」

間の抜けた声が出た。
夫妻は、仮契約寸前だったA社ではなく、
これから、村上と共にセキスイハイムで
家づくりをすすめたいというのだ。
村上に、転機が訪れた。

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勝負はこれからだ!

鈴木夫妻の住まいは、
当初の予定だった札幌の郊外ではなく、
みのりさんの実家に近い
ニュータウンに決まった。
村上が、家族のあらゆる可能性を想定して、
真剣に土地探しをしたからだ。
価格も低く抑えられ、少しの間ではあるが、
圭介さんが単身赴任する前に、
家族そろって新居で暮らすという夢も叶えられた。

「引越しの荷物がもうすぐ片付くから、
鍋パーティーにご招待します。
必ず来てくださいね」
鈴木夫妻との関係はいまも続いている。

鍋パーティーでは、カナちゃんも少し
心を開いてくれたように思う。
家が完成した直後の
「ありがとう」は嬉しかった。

「暮らしてみて、やっぱり村上さんにお願いしてよかった」
と言ってもらえるのは、もっと嬉しかった。
鈴木夫妻との出会いで、村上は変わった。
家づくりは、家族の未来をつくること。
その手助けができたという、確かな手ごたえを掴んだのだ。

契約がとれなくてどん底だったとき、
「お前は、ありのままでいい」と言ってくれた
上司や先輩の言葉が、今ならよくわかる。

そのままの自分で体当たりしないと、
他人の未来に関わる仕事はできない。

村上の夢は、展示場のエースになることだ。
それは、たくさんのありがとうがもらえること、
たくさんの人の未来をつくること。
もう、「ありのままの自分」で大丈夫。

村上が勝ち取ったのは、
新しくなった「ありのままの自分」だ。

END