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軟弱地盤の見分け方と対処法|硬質地盤との違いも

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軟弱地盤の見分け方と対処法|硬質地盤との違いも

家を建てるときは、地盤が安定しているかのチェックが必要です。弱い地盤の上に家を建てると、災害時などに建物が沈んだり損壊したりする可能性があります。地盤の危険性については地盤調査で分かりますが、事前に気になる土地の地盤がどのようになっているのかを知っておくと、土地選びがスムーズになるでしょう。

当記事では、軟弱地盤と硬質地盤の違い、軟弱地盤のリスクと見分け方、さらに地盤の改良が必要な場合の対処法をご紹介します。

1.軟弱地盤とは?

軟弱地盤は、国土交通省によって次のように定義されています。

軟弱地盤は、主として粘土やシルトのような微細な粒子に富んだ柔らかい土で、間隙の大きい有機質土または泥炭、ゆるい砂などから成る土層によって構成され、地下水位が高く、盛土や構造物の安定・沈下に影響を与える恐れのある地盤をいう。

引用:国土交通省 北陸地方整備局「第4章 軟弱地盤対策」引用日2023/04/10

軟弱地盤は地盤を形成する層に粘土層・砂層が多く、地盤がやわらかくなっています。そのため、軟弱地盤は土の強度が弱く、外圧によって変形しやすいのが特徴です。

また、河川・沼地などの水辺を埋め立てた土地や地下水位が高い土地など、地盤の水分量が多いことも軟弱地盤の特徴の1つです。軟弱地盤はやわらかく水分を多く含むことから、低地に多く見られます。

1-1.軟弱地盤と硬質地盤の違い

一方、硬く締まりのある地盤を硬質地盤と呼びます。硬質地盤の地層には岩盤や砂礫が多く含まれており、地盤が安定して強いのが特徴です。

軟弱地盤は水を含みやすい性質があるのに対し、硬質地盤は透水性に優れ、地盤そのものにはあまり水を含みません。また、低地に多い軟弱地盤と違い、硬質地盤は山地・丘陵地・台地などの高所に多く見られる傾向にあります。

2.軟弱地盤で起こりうること

軟弱地盤はやわらかく安定性を欠くため、建物を建てるのには不向きです。何の対処もせずに軟弱地盤に建物を建てると、リスクが生じる恐れがあります。

軟弱地盤で起こりうるリスクの具体例は次の通りです。

基礎が沈下して建物が傾く
やわらかい軟弱地盤に建物の重みがかかると、地盤が圧縮・変形を起こし、徐々に基礎が地盤ごと沈下する場合があります。

特に粘土層を多く含む地盤では、不同沈下が起こりやすくなります。不同沈下とは、場所によって沈下の仕方にばらつきが生じる現象です。不同沈下が起こると建物が傾き、日常生活に支障をきたしたり、建物の劣化が進んだりと、住む人の快適性や安全がおびやかされる事態に発展する恐れがあります。

災害時に地盤が液状化し建物が沈む
地震などの災害が起こると、地盤の液状化が引き起こされて建物が沈む場合があります。液状化現象は、地盤の結合が地震の揺れなどで緩み、地下水の中に浮いたような状態になると地盤が液体状になる現象です。

同じ成分や同じ大きさの砂で形成された土が地下水で満たされると起こりやすくなります。軟弱地盤は水を含みやすいため、特に地下水位が高い場所では液状化が起こることを想定しましょう。

地震の際に建物の壁に亀裂が入る
不同沈下によって基礎が傾いた状態で沈下すると、地盤の歪みが原因となり基礎や建物にも被害が出る恐れがあります。地震で地盤が歪んだ場合、基礎が壊れ、建物の壁にまで亀裂が入ることもあるため危険です。

軟弱地盤で起こりうるリスクは、いずれも住む人の安全に関わるものばかりです。被害の規模も決して小さくないため、補修も大がかりなものになります。

3.軟弱地盤の見分け方3つ

建物を建てる際は必ず地盤調査を行うため、土地が軟弱地盤にあたるかどうかが建てる前に分かるケースがほとんどです。

地盤調査以外にも、ハザードマップのように地盤を確認できる地図サイトで軟弱地盤かどうかをチェックするなど、さまざまな方法があります。以下では、軟弱地盤の見分け方を詳しく説明します。

3-1.人工的に埋め立てられた盛土であるか

盛土とは、地盤の上に土を盛る工法です。敷地を平らにならす・人工的に勾配をつける・地面を高くするといった目的で使われる方法です。

盛土が行われている場所は地盤沈下が起きやすいと言われています。もともと河川・沼地・田んぼなどを埋め立てた場所には盛土が行われているケースが少なくありません。元の地層は水分を含んだ軟弱地盤のため、盛土や建物の重量で地盤沈下が起きたり、液状化現象が起きたりする恐れがあります。

周辺に高低差がある場合も盛土が行われています。ひな壇造成が行われた住宅地は、従来の地盤を掘削した切土と盛土を併用して造成された土地です。切土部分と盛土部分にまたがっている場所は、それぞれ地盤強度が異なるため不同沈下が起こりやすくなっています。

また、盛土に異物が混入している場合や締め固めが不十分な場合は、盛土自体が軟弱地盤のように圧縮され、地盤沈下を起こすこともあります。

3-2.水や植物に関する漢字を使った地名であるか

古くからの地名は、土地の自然環境を示すヒントです。水に関係する漢字や、水辺の植物を表す漢字が地名に入っている地域は軟弱地盤である可能性があります。

地名に次のような漢字が入っている場合は注意しましょう。

水に関する漢字 水・川・河・流・池・沼・海・島・洲・浜・波・潮・沖・津・浦・田・亀・蟹・鴨 など
水辺の植物 葦・稲・蓮 など

他にも「谷」など、低地であることを示す漢字が入っている場合も軟弱地盤の可能性があります。

現在の住居表示は古い地名と関連性のない名前が後からつけられているケースもあるため、軟弱地盤の調査をする場合は旧地名を調べましょう。旧地名は図書館や法務局などで調べられます。

3-3.周辺の建物や電柱などに歪みがあるか

周辺にある建物や電柱を観察し、歪みや傾きがないかを確認しましょう。建物や電柱の歪みは、軟弱地盤が原因で発生していると考えられます。

軟弱地盤の場合、建物の基礎部分に亀裂が入っているケースも多いため、基礎部分の傾きだけでなく亀裂の有無にも注目するとよいでしょう。

4.地盤の改良が必要な場合の対処法

地盤調査で軟弱地盤と判断された場合、建物の建設工事前に軟弱地盤改良を行う必要があります。地盤改良工事には、「表層地盤改良工法」「柱状地盤改良工法」「小口径鋼管工法」の3種類があります。

表層地盤改良工法
表層地盤改良工法は、地盤の表面部分を削り、セメント系固化剤を現地の土を混ぜて締め固めることで地盤を強化する工法です。表面部分に施工するため、軟弱地盤が浅い場合に有効です。工期は1〜2日と、短期間で行えます。1か所でも軟弱地盤が深い場合や、地盤改良面より地下水位が高い場合は施工できません。

費用相場は、床面積約20坪あたり約50万円となっています。

柱状地盤改良工法
地中に直径60cm程度の穴を開け、ミルクセメントと現地の土を混ぜて円柱状の硬い地盤を作り、建物の基礎を支える工法です。軟弱地盤が約2〜8mの場合に効果的な工法です。工期は2〜3日程度となっています。セメントを使うため、重機を搬入できない狭小地などは施工できない場合もあります。

費用相場は、床面積約20坪に4mの杭を作る場合、約100万円です。ただし、費用相場は杭を打ち込む深さに比例して高くなります。

小口径鋼管工法
硬質地盤に鋼管杭を打ち込んで建物の基礎を支える工法です。地中の柱で地盤を強化する点では柱状地盤改良工法と同様であるものの、柱の材質が異なっています。小口径鋼管工法では、地中30mの深さまで対応できます。工期は1〜2日と短い期間で行えますが、騒音や振動が激しいため近隣への配慮が必要です。

費用相場は、床面積約20坪で100万〜200万円程度と、3つの方法の中ではもっとも高くなっています。

地盤改良の工法は基本的に専門家である施工会社が決めるため、施主が判断することはないと考えてよいでしょう。ただし、どのような工事が行われたかについては、施主も見積もりの段階から把握しておきましょう。

まとめ

軟弱地盤は粘土層・砂層が多く、地盤がやわらかいのが特徴です。軟弱地盤は土の強度が不足しているため、建物など重量のあるものが加わると沈下が起きるリスクがあります。

家を建てる際は必ず地盤調査が行われますが、自分で軟弱地盤であるかを確認することも可能です。人工的に埋め立てられた盛土や水や植物に関する漢字を使った地名の場所、周辺の建物や電柱などに歪みがある場所は、軟弱地盤である可能性が高いです。

地盤調査で軟弱地盤と判断された場合は、軟弱地盤改良を行います。工法は「表層地盤改良工法」「柱状地盤改良工法」「小口径鋼管工法」の3種類です。どのような工法が使われたかは見積もりの段階で分かるため、事前にチェックしておきましょう。

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